韓流ブーム支える東南アジア ドラマ・歌手・コスメ…幅広く浸透
ペ・ヨンジュンさんとチェ・ジウさんの看板の前で、写真に納まる観光客＝６月、韓国・春川市の南怡島（共同）
韓国ドラマ「冬のソナタ」が日本で初放送されてから今年で１０年。日本では韓流が定着し、かつてのような熱狂的ブームは一服した。一方、ドラマやＫ－ＰＯＰ、コスメなど韓国大衆文化は東南アジアなどにも広く浸透。かつて日本人が大挙して押し掛けた冬ソナのロケ地、南怡島（ナミソム）は、東南アジアや中国からの観光客でにぎわっている。
◆大型バスがずらり
韓国北部春川市の北漢江に浮かぶ南怡島。島に渡るフェリー乗り場の駐車場には大型バスが１０台以上並び、１０分ごとに出発するフェリーも観光客でごった返していた。
ドラマの中で主人公のペ・ヨンジュンさんとチェ・ジウさんがデートしたメタセコイアの並木道では、観光客らが思い思いのポーズで写真撮影する。中国人団体客や、イスラム教徒の女性が着用するスカーフ「ヘジャブ」をかぶった女性は見かけたが、日本人はほとんどいない。
「冬ソナを見て、来てみたくなった」とマレーシアから来たハスラさん。タイから訪れたニサシェルさんは「タイでは韓流が人気。韓国の歌手も料理も大好き」と声を弾ませた。
南怡島は面積約４６万平方メートル、周囲約５キロの小さな島だ。四季折々の自然を楽しめ、もともとはホテルや別荘がある保養地だった。
島の関係者は、韓国での知名度は高くなかったが、「冬ソナ人気で日本から観光客が多数訪れたことで国内でも注目され、有名になった」と話す。
韓国メディアなどによると、アジアでの韓流ブームを追い風に、南怡島を訪れた外国人観光客は約１８万人だった２００８年以降年々増加。１２年には約６５万人に膨らんだ。
国・地域別ではタイが約２１万人でトップ。台湾が約１７万人、中国が約１１万人、マレーシアが約６万５０００人と続く。日本人はピークだった０４年と０５年にそれぞれ約１０万人が訪れたが、その後は減少し、１２年は約１万２０００人で１０番目だった。
韓国政府による売り込みなどで、東南アジアでも００年代初めから韓流ブームに火が付き始めたとされる。「韓国女優の化粧がお手本」（タイ・バンコクの４０代女性）という人もいて、バンコクには韓国コスメの専門コーナーを置く薬局もある。Ｋ－ＰＯＰアイドルグループの登場で韓流ブームは若年層にも広がった。韓国でのコンサートにファンが駆け付け、観光促進にも一役買っている。韓流は裾野を広げ、日本でもこの１０年ですっかり溶け込んだが、日韓関係の悪化が水を差す。
◆日本では両極化
内閣府が昨年１１月に発表した調査では、韓国に「親しみを感じる」人の割合は３９．２％で１１年の前回調査より２３．０ポイント減。一部の大学では韓国語を第２外国語に選ぶ学生が大幅に減り、韓国への興味はしぼみつつある。
韓流を売り込む有力市場でもある日本の関心を引き戻そうと、韓国側は新聞広告で韓流の魅力をアピールするなど、友好ムードを演出する。
ただ、静岡県立大国際関係学部の小針進教授（韓国社会論）は「（ファンの間で）韓流が下火になることはないが、新しいファンがついてくるかは分からない」と指摘、韓流を好きか嫌いかの両極化が進んでいるとの見方を示した。
【用語解説】韓流ブーム
映画やドラマ、音楽など韓国の大衆文化が大流行する現象。日本では２００２年の日韓共催サッカーワールドカップ（Ｗ杯）を機に、韓流が広く浸透した。特に、純愛を描いたドラマ「冬のソナタ」は日本の中高年女性の心をつかんだ。主演俳優のペ・ヨンジュンさんは「ヨン様」と呼ばれ、熱狂的ファンによる追っかけも。完成度の高い歌やダンスが定評のＫ－ＰＯＰでは、「東方神起」や「ＫＡＲＡ」「少女時代」などのグループがブレーク。東南アジアや中国への進出も活発で、一大ブームを巻き起こした。最近はＫ－ＰＯＰアイドルが出演するミュージカルも注目される。
（ソウル 共同）